生態系
1 調査範囲
計画地が位置する北条町周辺を原則とした。(調査範囲の詳細は付属資料を参照のこと。)
2 調査対象
鳥類のみとした。
その他の動物(哺乳類、両生・爬虫類、昆虫類)及び植物については、調査範囲(北条町での記録があるもの、天神川河口〜下流での記録があるもの)付近における生息・生育種を付属資料に整理した。
3 調査方法
第7-1表に示す文献等を用いて、調査範囲における動植物(鳥類、哺乳類、両生・爬虫類、昆虫類、植物)の生息・生育状況を把握した。確認された鳥類については、第7-2表に示す法令・資料に基づいて、重要種を選定した。
また、鳥取県内の鳥類の有識者にヒアリングを行い、調査範囲付近における鳥類の生息種や生息状況を把握した。
第7-1表 生息・生育状況の把握に用いた文献・資料
第7-2表 重要種の選定に用いた法令・資料
4 調査結果
(1) 計画地の現況
計画地は北条町北部の沿岸部に位置している。
計画地周辺は、農耕地、海岸防砂林(クロマツ林)となっており、平行して国道9号線、建設中の高速道路用地等がみられる。計画地周辺の植生は特に自然度が高いものではなく、重要な植物群落等に選定されているものではないが、海岸の松林は保安林に指定されている。
(2) 鳥類の生息状況
@文献調査による確認種
文献調査の結果、調査範囲において生息が確認された鳥類は10目16科41種である(第7-4表参照)。またこれらのうち、10目16科40種の重要な鳥類が選定された(第7-5表参照)。
確認種の特徴としては、シロエリオオハム等の海域に生息するもの、クロサギ、コアジサシ等の沿岸海域に生息するもの、ツクシガモ等の干潟に生息するものなど、海域と結びついた種が多く、その他にも、マガン、コハクチョウ、など広大な水田地帯、湿地などに生息する種が多いことが特徴となっている。
Aヒアリング調査による鳥類の生息状況
ヒアリング調査では、計画地付近における鳥類の生息情報として、以下のような知見が得られた。
計画地付近の生息種は海鳥が中心だが、渡りの時期にはヒタキ類などの山の鳥が、海岸近くに出現する。
計画地付近における希少猛禽類としては、ハヤブサ(冬のみ)、ミサゴ(周年)などが生息している。ミサゴは天神川沿いをよく飛んでいる。また、海岸の松林ではオオタカを見ることがある。
計画地付近における猛禽類の繁殖情報は不明、ミサゴは餌を持って天神川沿いを内陸の方に飛んでいくので、山の方で繁殖しているかもしれない。
天神川には、チュウヒ類なども飛来する。
天神川河口部にはシギ・チドリ類、カモメ類等の海鳥が飛来する。
天神川河口部にはコアジサシが飛来し、毎年営巣する。
天神川下流部には、渡り時期に2万羽程のツバメが集まる。
計画地付近の水田にはマガンが飛来することがある。
天神川や周辺水田には100羽前後のコハクチョウが飛来する。
Bヒアリング調査による鳥類への影響等
ヒアリング調査により、現段階で想定される影響や鳥類への懸念材料として、以下のような知見が得られた。
渡り鳥が通過する際や、猛禽類が餌を探す際に風車と衝突することが懸念される。
計画地付近はヒタキ類を始めとする小鳥類やシギ・チドリ類の渡りが見られる場所である。特に日本国内において小鳥類が北上する渡りルートは日本海沿岸に集中していることから、小鳥類にとっては極めて重要度が高い。
小鳥類は主に夜間に渡りをするが、濃霧時等には方向を見失い明かりに集まる習性がある。このため風車へのライトアップ等は極力行うべきではない。
第7-4表 文献調査による鳥類確認種
第7-5表 文献調査による重要な鳥類
5 評 価
(1) 調査結果のまとめ
計画地周辺における鳥類の生息状況の特徴として、次の点が挙げられる。
○ヒタキ類等の小鳥類、シギ・チドリ類、カモ類を始めとする渡り鳥の渡りルートとなっている。特に小鳥類の渡りルートとしては重要な場所にあたる。
○天神川河口付近は、各種の渡り鳥の中継地、重要な鳥類の生息地として重要な場所にあたる。
○重要な鳥類として、マガン、オオハクチョウ、コハクチョウ、ミサゴ、オオタカ、ハヤブサ、コアジサシ等が生息している。このうち、繁殖期に計画地周辺を利用すると考えられるのはコアジサシ、ミサゴ等が挙げられ、越冬期に利用すると考えられるのは、オオハクチョウ、コハクチョウ等が挙げられる。
(2) 影響予測
前述の生息状況の特徴に着目して、風車の建設による鳥類への影響について検討した。
@ 風車建設に伴う土地改変及び伐採による直接的な影響
風車は海岸砂防林と高速道路用地の間の農耕地に建設する計画であり、風車建設伴う樹林の伐採は生じない。また本計画は、ガン・カモ・ハクチョウ類やシギ・チドリ類が利用するような水域、汀線付近等を改変する計画ではないため、風車の建設により、これらの種の生息及び繁殖基盤が消失することはないと考えられる。
A 建設工事中における繁殖環境への間接的な影響
計画地付近を繁殖場所とする鳥類はあまり多くないが、天神川河口部ではコアジサシが繁殖している。ただし、建設予定地から天神川河口までは距離が離れていることから、建設工事に伴う騒音等によるコアジサシへの影響はほとんど無いと考えられる。
B 風車の存在による飛行への影響
計画地付近は渡り鳥の通過ルートになっているという情報が得られており、渡り鳥が風車の回転圏内に近づく可能性がある。特に夜間に渡り小鳥類は濃霧時に明かりに集まる習性があるため、風車のライトアップ等を行った場合危険が大きい。また、渡り鳥以外にも、海域と内陸部を行き来する鳥類(ミサゴ、トビ、カモメ類、カモ類等)が、風車の回転圏内に近づく可能性があると考えられる。
(3) 環境保全対策
鳥類をはじめとする生態系への影響を低減するために、現段階で考えられる環境保全対策を以下に示す。
建設工事に先駆けて、年間を通した鳥類の詳細な実態調査を行い、更なる影響検討を行った上で、事業の是非を判断する。
事業の実施にあたっては、可能な限り低騒音型の建設機械、及び風車の導入を検討する。
鳥類の衝突防止のために鳥類が視認しやすいデザイン(ブレードの着色又は、障害灯と併用した点滅型照明等)を検討する。
鳥類が送電線に衝突することがないよう、送電線は地下埋設とする。
夜間に渡りを行う渡り鳥は、濃霧時等に明かりに集まる習性があるため、風車へのライトアップは行わない。
工事用道路、工事ヤード等の跡地は、改変前と同様な環境に回復する。
(4) 評 価
文献およびヒアリング調査の結果、計画地周辺は渡り鳥の通過ルートになっているという情報が得られており、特に、風車の存在によるこれら渡り鳥の飛行ルートへの影響が考えられる。
そのため、建設工事に先駆けて、年間を通した鳥類の詳細な実態調査を行い、更なる影響検討を行った上で事業実施の是非を判断し、重大な影響が及ぶと判断された場合を除き、多少の影響が考えられた場合でも前述の環境保全対策を講じることにより、実行可能な範囲内で、生態系に与える影響を検討していくこととする。
生態系調査付属資料
1.文献・資料等
付表1に示す文献等を用いて、調査範囲における生息・生育状況を把握した。
付表1 文献・資料等
2.調査範囲
計画地が位置する北条町全域、及び天神川河口〜下流を調査範囲とした。
3.調査結果
調査範囲における哺乳類、両生・爬虫類、昆虫類及び植物の生息・生育種を付表2〜5に示す。なお、各表中の文献番号は付表1の番号に対応する。
付表2 調査範囲における哺乳類生息種
付表3 調査範囲における両生・爬虫類生息種
付表4 調査範囲における昆虫類生息種
付表5 調査範囲における植物生育種