鳥取県北条町風力発電所機種最終選定について
北条町風力発電事業化推進委員会
委員長 光多長温
1 目 的
北条町風力発電計画における風車の機種選定について、北条町風力発電事業化推進委員会
設置要綱第2条に基づき、北条町から検討依頼があったため、本委員会で検討を加えた。
2 日時及び委員
日 時:平成15年8月28日(木)
場 所:鳥取大学地域共同研究センター会議室
出席委員:鳥取大学教育地域科学部教授光多長温(委員長)、鳥取大学工学部教授林農(副
委員長)、県自然エネルギー推進室長石黒仁史、北条町助役宇山茂人
3 評価対象
平成15年4月16日に開催した本委員会で絞られた3案について、選考の対象とした。
機種名 |
V80-2.0MW |
MD77 |
FL-MD77 |
定格出力×基数 |
2000×7基=14000 |
1500×9基=13500 |
1500×9基=13500 |
メーカー名 |
VESTAS |
REpower |
Fuhrlander |
呼称 |
ヴェスタス |
リパワー |
ファーランダー |
生産国 |
デンマーク |
ドイツ |
ドイツ |
国内取扱会社 |
大旺建設(株) |
(株)明電舎 |
NEIC-JAPAN |
3 選定経過
(1)経過
@3月20日に9社に対して建設費、保守管理費も含めた機種の提案依頼を通知。7社
による10案の提案があった。(資料1・・提案の概要)
A4月16日開催の本委員会で3案まで絞込みを行ったが、「リスク負担」、「保守管理」
等の面において、不明な点があったため、林副委員長及び北条町においてヒアリング
等を行い、詳細を検討することとした。(資料2・・「鳥取県北条町風力発電所機種選
定について」)
B北条町から3社に対し、別添調査表に基づき、詳細調査及び再提案を求め、その結果
について6月6日に林副委員長及び北条町長、助役、担当課長によるヒアリングを実
施した。その結果、更に不明な点等があったため再度、調査を行うこととした。
(資料3・・・調査表 資料4・・・各社提出資料)
C北条町から3社に対し、別添調査表に基づき、再度の調査を求め、その結果は別添の
とおりである。(資料5・・・調査表 資料6・・・各社提出資料)
(2)評価基準
委員会で協議して評価基準を定め、定められた基準にしたがって採点を行い、採点
結果をもとに、選定をすすめることとした。
【評価基準】
配点及び基準については、次の表のとおり、原則、4月16日開催時の基準とした。ただし、
リスク負担の部分については、配点はそのままとしているが、詳細が明らかになったため、3項
目に細分化し、評価することとした。
項 目 |
配点 |
選 定 理 由 |
||
1.技術の 新規性 |
15 |
鳥取県内の先駆的事業として他の自治体等のモデルとなることを期待するため、技術の新規性を基準に盛り込むこととした。新規性の判断の細分については次のとおり |
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|
定格出力 |
10 |
設備利用率の向上、費用対効果の観点から、今後はできるだけ大出力の風車をたてることが望ましい。 |
|
ハブ高さ |
5 |
設備利用率の向上、費用対効果の観点から、今後はできるだけハブ高さの高い風車をたてることが望ましい。 |
||
2.コスト |
40 |
県内のモデルとして、採算の確保が重要となるため、基準に盛り込むこととし、配点についても重視した。 |
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3.リスク の負担 |
10 |
風力発電事業は、技術的にも実績的にも完全に確立された事業ではないため、建設後の稼働率等について見込みと異なった場合の対応について基準に盛り込むこととした。 |
||
|
稼働率保証制度(発電量)の充実度 |
10 × 1/3 |
稼働率低下による発電量低下について、保証制度があり、かつ、できるだけ高い稼働率で保証された方が望ましい。 |
|
稼働率保証制度(保証期間)の充実度 |
10 × 1/3 |
できるだけ長期間、保証された方が望ましい。 |
||
機器保証制度の充実度 |
10× 1/3 |
機器が原因による故障について、保証期間、保証範囲等の充実度を基準とした。 |
||
4.管理 |
10 |
保守管理体制の充実度合いによって、稼働率、ひいては採算にも大きな影響があるため、基準に盛り込むこととした。 |
||
5.安全性 |
25 |
高速道路予定地に隣接していること、また、雷についても 町内で相当の落雷被害があることから基準とした。基準の細分については次のとおり。 |
||
|
極地風速 |
20 |
建設予定地は高速道路予定地に隣接しており、また、県内では約50mの最大瞬間風速を過去、観測していることから極地風速の耐久度を重視した。 |
|
雷対策 |
5 |
稼働率等に影響があることから基準に盛り込むこととした。 |
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合 計 |
100 |
|
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(3)採 点
評価基準にしたがって、提案について採点を行った。
評価の対象は3社の最新の提案とし、前回の本委員会以降の調査によって明らかにな
った点を加味することとした。
「1.技術の新規性」
定格出力は10点満点で、提案のあった最低の1500KWについても新規性があ
ることから5点とし、1800KW…7点、日本で最大級となる2000KWを10
点とした。(前回同様)
ハブ高さは提案のあった最高の85mを5点の満点とし、最低の60mであっても
国内実績では新規性がある程度認められることから2.5点とし、78m、65mに
ついてはそれぞれ4点、3点とした。(前回は最高の高さが78mであったが、それを
越えるものがでてきたため若干の変更を加えた。)
「2.コスト」
40点満点で発電コストが14円を超えるものは0点、それから0.5円ずつ安く
なるごとに4点ずつ加算し、発電コスト9.5円未満となるものを40点にすること
とした。(前回同様)
「3.リスクの負担」
10点を満点とし、次の3項目に細分化して採点した。
@稼働率保証制度(発電量)の充実度
3.3点を満点とし、稼働率保証制度のないものを0点、90%未満のものを
1点、90%〜95%のものを中間の1.7点とした。なお、期間によって保証
する稼働率に違いのある提案については、期間による加重平均によって保証稼働
率を算出して評価した。
A稼働率保証制度(保証期間)の充実度
3.3点を満点とし、保証制度のないものを0点、17年間を満点とし、5年
間を中間の1.7点とした。追加費用のあるものは8掛とした。
B機器保証制度の充実度
3.3点を満点とし、制度なしを0点、風車2年間保証を中間の1.7点とし
た。 追加費用による風車の5年保証という提案については、追加費用と保証期
間延長の目立地ととのコスト比較が不明のため風車2年間保証と同様の1.7点
とした。また、風車2年間保障に加え電気設備の5年保証という提案については、
2.3点とした。
(前回の委員会では、提出された資料では詳しい制度内容について比較・判断でき
ないため、制度があるというものについて8点、別途協議を7点、制度なしとい
うものについても6点としていたが、その後の調査により、詳細が判明したため、
今回は細分化して評価した。)
「4.管理」
風車設置後に重要となる保守管理体制の充実度で判定した。10点満点で1日目対
応を8点、平均2日目対応を7点3日目対応を6点とした。(前回同様)
「5.安全性」
極値風速は、クラスT〜クラスVまでの提案があり、クラスTを20点×0.9=
18点、クラスUを12点×0.9=10.8点、クラスVを4点×0.9=3.6
点とした。極地風速の耐久度については、完全ということはないと思われるため0.
9掛けとしている。なお、ナセル・ブレードはクラスV、タワーはクラスTという提
案については、クラスU相当とした。
雷対策は5点満点としたが、各社とも主要設備間の避雷器、ケーブル設置について
差が認められなかったため、4点とした。(前回同様)
なお、採点にあたって、次のような意見があった。
コストについて、「これまでの評価基準で今回の提案内容を評価すると、あまりにも差が少
なすぎ、コスト重視としながらも、実態としてそうなっていないのではないか、もっと評価
の区分を細分化し、差がつくようにすべきではないか」というものである。
傾聴すべき意見ではあるが、協議の上、以下の理由で基準は変更すべきでないという結論に
いたった。
@再提案を依頼した際、評価基準を公表しており、基本的にはその評価基準によって選
定する旨通知していること。
A前回委員会時の提案では、10.39円/kwh〜15.41円/kwhの散らばり
があり、中間の12円を5点として0.5円きざみで区分したもの。今回の提案は、
この評価基準で、一定の評価を得たものであり、あえて差をつける必要はないこと。
以上の採点の結果は別表「評価結果一覧表」のとおりである。
(4)林副委員長から、別添のとおり「技術的側面からの選定理由」が提出された。
(5)結果
「評価結果一覧表」ではヴェスタスが最も評価が高かった。また、「技術的側面からの
選定理由」においてもヴェスタスの優位性が示されている。これらの結果を勘案した結
果、稼働率の長期保証、発電規模の大きさ・新規性などの計画内容の魅力、世界的な信
頼性、北条町における安全性などの点で、総合的に判断した結果、ヴェスタスを最適機
種として、本委員会は提言する。
なお、実際の契約までに、稼働率保証等の諸条件の確認及び履行の確保、コスト面の
向上など、町において更なる努力が望まれる。
(6)講評
以上の結果は、林副委員長の熱心な調査と平成15年8月28日に開催された本委員
会の2時間余りにわたる慎重な検討により導かれたものである。
4月16日に第一回目の委員会を開催してから、今回の最終的な機種選定にいたるま
で、4ヶ月あまりの日時を要したことは、とりもなおさず、各提案がいずれもレベルの
高いものであったということを示している。
リパワーについてはコスト面で最も優位性があり、また保守管理についても風車本体
のみならず電気設備まで含めるなどの努力がみられ、非常に魅力のある提案であった。
ファーランダー社についても、コスト面でリパワーに次ぐものであったこと、ハブ高さ
を国内最高の85mとし、発電量の向上を図るなど新規性にも配慮がされていること、
稼働率保証もあり予想した発電量を得られる状態に風車が調整されることが期待される
ことなど、工夫のこらされた提案であった。
新技術の取り組みと建設地の気象条件による安全度の兼ね合い、コストと稼働率保証
などのリスク負担の兼ね合いなど、総合的なバランスで、両案ともヴェスタスに一歩を
譲る形となったが、今回の結果については、あくまでも鳥取県北条町の特性にあわせた
評価によるものであり、いずれも非常にレベルが高く、決してヴェスタスに対し決定的
な差があったというものではないことを強調しておきたい。